モルトとは?ビールの味も色も左右するモルトの働き
モルトとは?
ビールの原料である「モルト」は「ホップ」と同様にビールの味、風味を左右する重要な役割があります。
モルトはビールの主原料でもあるのですが、シングルモルトやブレンデッドモルトなど、モルトといえばウイスキーと感じる方もいらっしゃると思います。
ウイスキーのモルトもビールのモルトも実はまったく同じ麦!
知るとビールがもっと好きになるモルトの豆知識をご紹介します。
どんな麦でもモルトになるの?
ビールに使われる麦は主に大麦です。
大麦以外では、小麦、ライ麦、オート麦などが使用されます。
大麦には六条大麦と二条大麦があり、ビールには二条大麦が使われます。
モルト=麦芽
モルトはビールの4大主原料(モルト、ホップ、酵母、水)のひとつなのですが、ビールの成分表を見ると、モルトが書かれていないことがあります。
モルトは発芽させた麦のことで、モルトの記載がないときは麦芽と書かれているはず。
なぜ麦をわざわざ発芽させるのかというと、でんぷんやたんぱく質を分解する酵素を生み出すため。
麦にはたくさんのでんぷんが含まれているのですが、この状態だと酵母を用いてもアルコールを発生させることはできないので、まずでんぷんを糖分に変える必要があるのです。このことを「糖化」といいます。
糖化に必要な酵素を麦自身に作らせるために麦を麦芽にするのです。
麦芽作りからビール作りは始まる
ビールの製造工程は
1.製麦(せいばく)工程
2.仕込み工程
3.発酵工程
4.熟成(二次発酵・後発酵)工程
5.ろ過・熱処理
6.瓶詰めなどのパッケージング
の6つになり、モルト作りは最初に行います。
製麦工程とは?
麦を麦芽にするために、まず水に浸して(「浸麦(しんばく)といいます」)、発芽に最適な状態を作ります。
水温約15度なら2日程度給水させます。水に浸かっている間も麦は生きているので、空気を送ったり水を入れ替えたりして、発芽を促します。
浸麦の間に、麦についているホコリや雑味なども水に流れていきます。
給水期間が終わったら発芽室に移してさらに発芽を促します。
酵素の発生はこの工程の間に自然と行われます。
ビールの色を決める焙燥・焙煎
モルトとなった麦は、乾燥の工程に入ります。
最初は低い温度の温風で麦芽を乾かし焙燥(ばいそう)します。
85度~100度程度で乾燥させると色が淡い淡色麦芽に、160度~220度の高温で焙燥すると濃色麦芽になります。
色がとても濃い黒ビールなどに使われる麦芽は、焙煎によって作られます。
ロースト麦芽やロースト麦芽よりもさらに香りが濃く苦味のあるチョコレート麦芽などは、この焙煎の工程で生まれます。
モルトの種類でビールの味・風味・泡・色など性質が変わる
チョコレート麦芽と言われると、なんとなく黒ビールに使われるのかな?と想像がつきますよね。
では、他の麦芽にはどんな特徴があるのでしょうか?
ビールに使用されている6つのモルトをご紹介します。
ペールモルト
色が淡いポピュラーなモルト。時間をかけてじっくり乾燥させて作られます。
質が高く標準的で、もっとも多くのビールに使われているモルトです。
ウィートモルト
大麦ではなく小麦で作られたモルト。ビールを白濁させる作用がありますが、同時に泡持ちがとても良くなる効果も持ち合わせています。
ウィンナーモルト
ペールモルトよりも少しだけ高い温度で焙燥させた色麦芽。
ほんの少しだけついている焦げめが特徴で、赤みのあるビールによく使用されています。
カラメルモルト
イギリスのペールエールなどに使用されている色麦芽。
カラメルのような甘い香りが漂うビールになります。
チョコレートモルト
チョコレートのようなビターな香り、深い苦味を持つ色麦芽。
苦味の中に、ナッツのような香ばしさを感じることができます。
ブラックモルト
真っ黒に焙煎した色麦芽。
燻製のような香りがただようスタウト、黒ビールやスコッチエールなどに使用されています。
よくペールモルトと混ぜて使われます。
モルトが特徴のビール
世界のビールの中には、モルトに強烈な特徴があるビールが存在します。
シュレンケルラ「ラオホビア メルツェン」(ドイツ)
ラオホは煙やいぶすという意味のドイツ語。スモーク感が大変強く、好きな人はハマるけど苦手な人は二度と飲みたくない!と思うかも?
燃える焚き木に滲み出たオイルのような香りと表現する人もいるくらい、とにかくパンチが効いてます。
麦芽を燃え盛るブナの木の上に直接さらしてローストするので、とにかくアロマもフレーバーもスモーキー!ローストに使用するブナの木も3年かけてカラッカラに乾燥させるというこだわりがあります。
苦味は少なく、当然ながらスモークチーズやベーコンとの相性が抜群です。
ギネス「エクストラスタウト」(ドイツ)
黒ビールといえばギネスが思い浮かぶ人は多いはず。
ギネスの誕生には税金が関係していました。1759年当時、ドイツでは麦芽に税金がかけられていたのですが大麦は無税だったことからアーサー・ギネス氏が麦芽化されていない大麦をローストして黒ビールにしたのがギネスの始まりとも言われています。
なんとなく味も香りも苦そうなギネスですが、味はミディアム。色から想像するほど「濃い!重い!」という感じはありません。
ギネスは、必ずグラスでいただきましょう。そして、注いですぐに飲んではいけません。
ギネスビールの最高醸造責任者ファーガル・マーレイ氏によると、ギネスビールはグラスに2段階に分けて注ぎ119.5秒のカスケードショーを楽しむと最高においしい状態でいただけるのだとか!
⇒黒ビール「ドラフトギネス(缶)」の味は?飲んだ感想
サザンティア・ブリューイング「アンアースリーインペリアルIPA」(アメリカ)
2002年創業と歴史が浅いブルワリーですが、世界へ自社ビールを輸出しています。
アンアースリーインペリアルIPAは、2種類のモルトと4種類のホップで作られているアルコール度9.5%のビール。
褐色の色はカラメルモルトによるものです。
甘いモルトと苦味が鋭いホップ、高いアルコール度数はまさにアンアースリー!(この世のものではない!)
麦芽(モルト)比率で税金が変わる?
酒税法による税金は麦芽比率が50%未満の場合、それ以上のビール・発泡酒より安くなります。
そのため、大手の発泡酒は、いちばん税率の低い麦芽比率25%未満で多く作られています。
ビールは麦芽(モルト)比率67%以上であることが必要で、それ以下の場合発泡酒となります。
つまり、麦芽(モルト)の量や比率でビールが発泡酒になり、税金も変わってくるのです。
モルト(麦芽)はビール作りに欠かせないもの。
今夜ビールを飲むときは、麦芽のシゴトを感じながら味わってみてください!