上面発酵のエールビールとは?味や風味、飲み方等を解説
ペール・エールにブラウン・エール、そしてIPA!
「エール」と名のつくスタイルはいくつかありますが、エールと表記されていなくても実はエールというビールもたくさんあります。ジンジャーエールにも「エール」がつきますね。
エールって一体何なのでしょう?
深みと香りが魅力のエールの全てをご紹介します!
エール=上面発酵
エール(Ale)は上面発酵で作られるビールのこと。
20度程度の常温で3日~5日間程度発酵させます。
エールに使用する酵母は発酵したら泡とともに上に浮き、上方で活発に発酵しているように見えるため上面発酵と呼ばれます。
高温で発酵するため酵母由来のエステルが多く、フルーティーな香りが豊かなビールとなります。
10℃以上の高めの温度帯で飲んでもおいしいものが多く、味わいはもちろんですが香りも一緒に楽しみたいビールです。
ビールのラベルやビアバーのメニューに
「〇〇エール(ベルジャンスタイル・ペールエールとか)」
「エールスタイルのビールです」
などの記載があったら、そのビールは上面発酵で作られていると理解しましょう。
上面発酵があるなら下面発酵もありそうですよね?
もちろんあります。
下面発酵のことをラガーと言います。
その名のとおり、キリンラガー、サッポロラガービールやキリン一番搾り、スーパードライなどは下面発酵で作られています。
エールビールっておいしいの?味は?
エールが上面発酵ということはわかりましたが、本当に知りたいのは
エールってどんなビールなのよ?
おいしいの?
ズバリ、エールでおいしいビールはコレっていうのを教えて!
というところですよね。
おいしい、おいしくないは好みによるところが大きいので、こればかりは自分で確かめてみるしかありませんが、飲みやすいエールもあれば、慣れないと飲みにくいものもあります。
エールの中でも比較的飲みやすいのがペールエールです。
ペール・エールはこんなビール!
ペール・エールは甘い香りがする芳醇なビール。甘いといってもチョコレートのような甘さではなく、焼きたてのパンから漂ってくるアツアツの湯気のような香ばしい甘さです。
上面発酵で作られるビールは世界中にものすごい数があるので、特徴をひとまとめにすることはできません。
一般的に言われていることは
・ラガーよりも歴史がある
・常温で発酵させるため香りが豊か
・バナナやりんご、かんきつ類などのフルーティな香り(エステル)がするものもある
・複雑な風味が魅力
・アルコール度数は3%~14%を超えるものあるくらい幅が広い
・ベルギー、イギリスには上面発酵ビールが多い
など。
ペール・エールでおいしいビールはコレ!
本格的なペールエールを試してみたいならイギリスの「パスペールエール」を。日本のクラフトビールの中から選ぶなら銀河高原ビールの「ペールエール」を。
銀河高原ビールの「ペールエール」は、本場へのこだわりはそのままに日本人がおいしいと思うような創意工夫を行ってありますので、とても穏やかで飲みやすいペールエールです。
※筆者、ビアソムリエの私が実際に飲んで味や風味などを解説しているレビューがあるのでよろしければご覧ください。
⇒銀河高原ビール「ペールエール」レビュー
そのため、飲みやすいのは銀河高原ビール「ペールエール」、ペールエールの特徴がわかるのは「バスペールエール」になります。
この2点、Amazonでも購入できますので飲み比べてみるのも面白いと思います!
エールビールの飲み方
普段キレや喉ごしが良いビールを飲まれている方が、いきなりエールを飲んでしまうといろんな意味で失敗することがあります。
失敗の原因と対処法を知っておきましょう!
アルコール度数の確認を
エールの中にはアルコール度数が12%という高アルコールビールもあります。
イングランド発のバーレイワイン・スタイルがそれにあたります。他にも、ベルギービールの「デュベル」は8.5%、「シメイ ブルー」は9.0%。
デュベルのスタイルはストロング・ゴールデン・エールで、シメイブルーはトラピスト・スタイル。いずれも上面発酵で作られているエールです。
これらの高アルコールビールを、飲みなれているラガーの感覚でキンキンに冷やして喉にガーッと流し込んでも、本来のおいしさを味わうことはできませんし、身体がビックリしてしまいます。
エールだけのお話ではありませんが、初めてのビール(特に輸入ビール)に挑戦するときは必ずアルコール度数を確認してください。
同じビールでもアサヒスーパードライのようなキレのあるゴクゴク飲めるタイプのものと高アルコールビールは、飲み方が違うということを頭に入れておきましょう。
エールは温度は高めでもおいしい
ビールはキンキンに冷えていないとおいしくないという気持ちは一度忘れましょう。
エールビールは温度が上がってもおいしいんです。
そもそもエールは発酵温度が常温程度なので、そこまで冷えていなくても大丈夫。
ペールエールの適温も13度くらいと高めなので、あまり冷やしすぎないでください。冷えすぎてしまうと香りが立ちにくくなり、おいしさが損なわれてしまいます。
買ってきたエールを自宅で飲む場合は、冷蔵庫に入れるときに新聞紙にくるんで野菜室に入れておきましょう。冷えすぎを防ぐことができます。
アメリカンIPAにご注意を
ビール愛好家にファンが多いIPA(インディアン ペールエール)をさらに強力にしたのがアメリカンIPAです。
アメリカンIPAはカスケードホップというフローラルな香りと苦味が強めのホップが使ってあるのが特徴で、ハマる人は本当にハマるのですが、ペールエールで喉慣らしを行ってから飲んでみることをオススメします。
苦さと香りが口の中に残りやすいので、初めて飲むときはお水を用意しておくと良いかも?
ビールと一緒に水を飲むなんて大袈裟!と思われるかもしれませんが、ビアコンペティションの審査員も試飲を行いながら水を沢山飲みます。
ビールと水を交互に飲むことでアルコールを体外に早く排出することができますし、肝臓への負担と深酔いを減らせますよ。
エールを使ったビアカクテル
エールを使ったビアカクテルはビアバーでも楽しむことができますが、自宅でも簡単に作ることができます。
エールだからこそおいしいビアカクテルを2つご紹介します。
シャンディ・ガフ
ビールとジンジャーエールをグラスに注いで軽くステアするだけの簡単カクテルですが、昔のイギリスのパブではジンジャー・ビア(しょうが、レモン、砂糖、酵母などから作る発酵酒)とエールを混ぜて作られていました。
ラガーでも作ることができますが、ジンジャーエールの甘さと舌にピリッとくる風味に、エールの苦さとコクがよく合うので、エールでも試してみてください。
割合は1:1です。
ブラック・アンド・タン
エールとギネスで作るハーフ・アンド・ハーフがブラック・アンド・タンです。
グラスの半分までエールを入れ、バースプーンに沿わせるように静かにギネスを注ぎます。ビールしか入っていないカクテルなので、味はがっつりビールですが、うまくいくとエールとギネスの層ができて、見た目もカッコいいカクテルになります。
ケルト人も飲んでいたエール
エールの歴史は古く、古代イギリスであるブリテンのケルト人も穀物を使った発酵酒を飲んでいました。ハチミツから作る蜂蜜酒「ミード」の代用品として穀物酒の「エール」を飲んでいたとされています。
イギリスやベルギーのビール文化は、まさに「文化」と呼べるもので、ビールはただの飲み物ではなく歴史の一部。
最近ではコンビニで入手できるエールも増えてきたので、ラガーとはひと味違ったおいしさを味わってみてください。