ビールの製造方法「完成までの7つの工程」
唐突ですが、ビールはどうやってできているか考えたことはありますか?
素材選び・製麦・仕込み・発酵・貯酒・ろ過・容器詰めと大きく7つの工程を経て、ようやく製品として完成します。
ビールの作り手の努力を知ると、もっとおいしくビールを味わうことができるはず。具体的には、それぞれの行程でどのような作業が行われているのかを見てみましょう。
ビールの製造程1.「素材選び」
ビールの主な原料は、水・大麦・ホップの3つ。
水は、ビールの約90%をしめています。
美しい自然の中で育まれた本当においしい水を使うことで、クリアな味わいを実現します。
大麦とホップは、ビールの味を決めるため、各社最も力を入れている要素の一つ。
苦み・旨味のバランス・泡のキレ・香りの良さなど、複数の観点を考慮して理想に近い品種を選びます。
ビールの製造程2.「製麦」
大麦は、発芽する前に収穫します。
粒をより分け、芽を出させた所で乾燥して麦芽にします。
乾燥するときの温度や時間は、ビールの種類によって様々。黒ビールは高い温度でじっくりと、淡色ビールは低温でさっとローストするのが一般的です。
味に深みを出すために、麦芽の状態でしばらく寝かせることもあります。
ビールの味と香りを決める鍵になるのが、製麦行程。
より消費者のニーズに合った商品を開発すべく、常に改良努力がされています。
ビールの製造程3.「仕込み」
仕込みは、麦芽から麦汁を作る行程です。
麦芽を細かく砕いた後、50度前後のお湯にひたします。
そしてできるのが、もろみです。
この段階では、液体がにごった状態。ろ過してクリアな液体にします。
この時にできあがる液体が、本物の一番搾り。
一方、お湯で洗い流してできる液体は二番絞りと呼ばれています。
一番搾りや二番絞りにホップを加えて煮沸すると、ビールのもとになる麦汁の完成です。
ビールの製造程4.「発酵」
発酵は、麦汁から若ビールを作る行程です。
前行程で作られた麦汁を、5℃くらいに冷ました後に酵母を入れて発酵させます。
7~10日ほど経過すると、糖分がアルコールと炭酸ガスに分解。こうしてできるのが、若ビールです。
この段階になるとビール独特の香ばしい香りがでてきますが、まだとげがあり洗練されていません。
うまみも少なく、物足りない印象を持つでしょう。味に深みを持たせるべく、もう一踏ん張り熟成させると私たちの愛するビールができます。
ビールの製造程5.「貯酒」
熟成の行程では、0℃くらいに保たれたタンクの中で数十日寝かせていきます。
タンクの中では、発酵を終えても残っていた酵母が再び活性化し拡充、後発酵が進んでいきます。
後発酵が進むに連れて、浮遊物は底に沈んでいき見慣れた黄金色の液体に。
味はまろやかになり、ビール独特の清々しい香りの完成です。
ビールの製造程6.「ろ過」
少しでも沈殿物があると、グラスについだ時に美しく見えません。
役目を終えて残った酵母やタンパク質のカスを、ろ過してきれいに除去します。
澄み切った色にするためだけでなく、クリアな飲み口にするために必要なのがこの行程。
1ミクロン以下というとても小さなフィルターを通し、残ったカスを除去していきます。
ビールの製造程7.「容器詰め」
全ての行程にかかる期間は、数ヶ月。
手間隙かけてできあがったビールは、瓶もしくは缶に詰められて出荷されます。
容器につめる際、そのままつめたものが生ビール・もう一度熱処理を加えたものが熱処理ビールと呼ばれます。
生と熱処理、どちらがおいしいのかは好みの問題。
生の方が素材の旨味が活きて好きという人もいれば、熱処理ビールの方がすっきりしていてクリアな味と感じる人もいます。
アサヒスタウト・キリンクラシックラガー・サッポロラガーなどが熱処理ビールの代表格。気にしたことがない方は、どちらが好きか飲み比べをしてみましょう。
日本で発売されている一般的なビールのほとんどは、上記製造方法で作られます。
ラガービールとエールビール
ラガービールと呼ばれるものです。
味や品質を統一しやすく、大量生産しやすいのがメリット。
いつどこで買っても同じ味なのは、銘柄指定で買う人には安心感があると思います。
今や広く使われているラガービール製法ですが、実は新しい製法です。昔ながらの方法で作ったものが、エールビール。
違いは醸造行程で、ラガーは下面発酵なのに対してエールは上面発酵です。タンクの上で発酵させると、フルーティーで味わい深いビールができると言われています。
製法の違いで、味や香りがかなり変わるもの。
エールビールは、ワインのようなコクがありフルーティーな味がします。
アルコール度数が低めのものが多いので、お酒が苦手な人や女性には好まれるかもしれません。
一方、のどごし・さっぱりとしたキレを求めるビール党には、抵抗を感じる方もいます。
自分の舌で確かめてみたいと思ったら、海外銘柄もしくは地ビールで「エール」の表記を探してみましょう。
文章にまとめてしまうと単純ですが、一つ一つの行程でよりおいしいビールを作るべく研究改良がされています。
大人の工場見学と称し、現地で製法を学ぶツアーもあります。
お気に入りのメーカーツアーに参加すると、よりビールについて知識が深まって愛着がもてるかも。
できたてのビールを試飲できる、うれしいおまけもついてきます。
我こそビール好きというあなた、奥深いビールの世界を学ぶべく製造方法をもっと知ってみてはいかがでしょうか。